自己紹介
簡単なプロフィール。
- 性別: 男性
- 年齢: 20〜30代
- 職業: 自動車メーカーでソフトウェアエンジニア
- 働き始めたのは、4〜5年前くらいから。新卒ではなく中途での入社。何度か転職はしているが、いわゆるJTCに入るのは今の会社が初めて。
- 働いているのは、どこかの自動車メーカー。元々経営がうまくいっておらず、たびたびニュースになっていたが、トランプ関税を受けて会社自体がもうかなりまずいことになっている。
本題
ホンダのテックブログが記事公開→炎上?→記事削除された件についての感想
消されてしまった元記事は、以下
https://honda-techblog.hatenablog.com/entry/2025/05/19/152406
魚拓が取られているので気になった方は以下
これを読んだ感想としては
- わかるわかる
- これがよく社内で通って公開されたな
- やっぱり消されたか
に尽きる。これ多分多くの自動車メーカーのソフトウェアエンジニアが上記の感想になるんじゃないかと予想している。
「ソフトウェア開発経験がある人が少なく、インフラが整っていない」
他の自動車メーカーで働いたことがないので確実とは言えないが、少なくとも私の会社は似たような状況だ。
私の会社でテックブログをやろうと思っても多分無理だと思う(理由は後述)
この記事を書かれた方には心の底から同情する。試みとしては素晴らしいと思うが、自動車メーカーでテックブログをやるのはかなりチャレンジングな気がしている。
自動車会社に入って思うこと
当該記事も踏まえて思いついたことを、雑だけど箇条書きにしてみた。
- 多くの人たち、特に偉い人たちは、ソフトウェアのことをよく知らない
- 自動車メーカーに限らずどこの会社もそうなのかもしれないが、AIならなんでもできるくらいに思っている。
- 車が絶対優先。ソフトウェアは優先されない。
- 当たり前といえば当たり前だが、スケジュールもだし、コストもだし。迫害を受けることはないが、大きな圧力は受ける。
- ソフトウェアのマーケティングやSNSの運用ができない
- 車は売れるけど、作ったネイティブアプリやWebサイトなどの広め方はわからない。
- 全体的に、多分今まで何もしなくても車が売れてきたんだろうなという印象を受ける。なので、会社としてマーケティング手法などを理解する必要もなかった可能性がある。
- 車は売れるけど、作ったネイティブアプリやWebサイトなどの広め方はわからない。
- なんでもかんでも基本外注だったので、「なぜこう作られているか」を誰も理解していない
- 発注しただけ、ベンダを率いただけで詳細を何もわかっていない人が多い。コードは書けないし、最新の技術もわからないけど、エクセル・パワポは使えるので、社内では立派なITエンジニアみたいな。
- 組織が大きいため、意思決定の速度が圧倒的に遅い
- 他部署との連携時などは特に遅い
- 社内のシステム・仕組み・文化が古い
- エクセルで管理されているものや、メールで送り合う文化が残っている
- 変化を起こすことに抵抗を感じる人が多い
- 「既存のルール・しきたりをできるだけ変えたくない」という抵抗力を比較的強く感じる。
- 能力の高い人は多いが、防御に特化した人が多い
- なぜなぜ分析のような思考フレームワークを昇進試験で強制されるため、論理的な人は他の会社に比べて多いイメージ。
- だが、どちらかというと攻め(自分の立場を捨てても組織のために)というよりは守り(自分の立場をなんとしても守る)に強い人が多い印象。
- 「ポジショントークばかりで、自分の範囲以外のボールは拾わず、最終決定をしない」人が課長クラスでも多いイメージ。
ホンダは何故記事を削除することになったのか
これは、記事がバズって軽く炎上?したことを、ホンダ内部でうまく処理できなかったためだと思う。
私がこの記事に最初に出会ったのはこのポストだった。
https://x.com/necobut/status/1924383686214185380
この「よく通ったな」というのは、自動車メーカーというかJTCにいる人なら誰でも思う感想だと思う。ただここから、
「そこまで書いていいの?赤裸々すぎやしないか?」
とか
下記の「労働組合への言及がよくないんじゃないの?」
選挙の際には労働組合関連の市議、県議、国会議員の応援などを求められます
みたいな指摘がXを中心に盛り上がり、ホンダ側で記事を削除することになったんだと思う。
上で、「内部でうまく処理できない」と書いたのは、これも自動車メーカーだからなのか、JTCだからなのかわからないが、「ネット上で下手に目立つな」みたいな風潮が社内全体にある。自動車会社は比較的大きい企業なので、何かがあるとすぐにニュースになってしまう。プラスでもマイナスのニュースでも。そしてそれが本体ではなくて子会社とかのニュースであっても親会社の名前で、大きく報道されてしまう。私の会社でもSNSへの露出みたいなのを怖がっている・恐れているような雰囲気は感じてしまう。
これを書いたのは、内製化チームとのことなので、前からいたというよりは、比較的新しいチームで、メンバーの多くは外から転職してきたソフトウェアエンジニアで構成されているんだと思う。
もちろん社内で、「こういうテックブログをやりたいので承認をください」というのを、きちんと通した上で記事を公開しているんだろうが、テックブログの全記事に役員が目を通して、いちいち承認するわけでもないので、幹部とか課長レベルの人がOK出したら公開くらいなんだろうと思う。
ここで問題なのは、
- 上に行けば行くほど、会社のことはわかるけど、技術のことはわからないし、世間のこともわからない
- 新しく入ってきたソフトウェアエンジニアは、技術のことも世間のこともわかるけど、会社のことがわからない
というズレだと思う。上の人が仮にちゃんと記事に目を通したとしても、これがどういう意味なのか、これを読んだ人がどう思うのか、SNSでどうバズるのかまでを予測できないのではないか。
ホンダ独自のサイトではなくて、あえてはてなブログでやっていることも、メッセージ性を感じるのだが、多分上の人には伝わっていないと思う。
そして、会社自体がとてつもなく大きいため(他部署は、他社くらいの感覚すら覚える)、IT部門だけでは手に追えない事態になってしまったんだろう。ブランドやマーケティングをやっている部署からしたら、外から入ってきたエンジニアのせいで会社全体にマイナスイメージがつくことになってしまうのは避けたかったのだろう。
まとめると、消されるべくして消された形になるかと思う。ただその結果、下記のように、風通しの良さが消えてしまったりと逆に、余計にマイナスなイメージになってしまったのである。
これから先、ホンダのテックブログは
- 閉鎖される
- 技術的なことに特化して続ける
のどちらかを迫られることになると思う。続けられるとしても、今までのような赤裸々な投稿(たった1つの記事だけだが)はできなくなり、ただの技術ブログになってしまうのである。(ただの技術ブログをdisっているわけではないが、企業の内情を知ることはできなくなるため、企業のテックブログとしては価値が下がるかと)
まとめ
記事を削除したことによって
「ホンダという会社は、ソフトウェア開発経験がある人が少なく、インフラが整っていない」
という指摘が正しいということを、世間に声高に宣言することになってしまったような気がする。本来やりたかったことと真逆の結果になってしまったわけだ。
更に、これを受けて他の自動車メーカーは「テックブログは炎上するから書くな」というの流れになるのではないか。少なくとも私の会社は、現在もテックブログを公開していないし、これから先も公開することはないだろう。
今までの話も踏まえると、
❌: ホンダという会社は
⭕️: 自動車メーカーは
が正しいのではないか。
つまり、「自動車メーカーは、ソフトウェア開発経験がある人が少なく、インフラが整っていない」
そりゃ、テスラに勝てないわけである。
自動車産業は、日本の強みだったのに、どんどん弱くなっている。
ホンダといえば、こんな記事が前にバズったことも思い出した。
http://redfiveswebnews.blog.fc2.com/blog-entry-1482.html
でもこれ多分ホンダだけではない。私の会社もだし、他の会社も似たような感じだと思う。
となると、導かれる結論は
「ソフトウェアエンジニアをやりたいなら、自動車メーカーには行くな」
ではないか。
それではまた。
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